〜売った話と、買わなかった話〜

「株式市場は、せっかちな人から忍耐強い人へお金を移すための装置である」


ウォーレン・バフェット(投資家)

子ども達へ

 今日は、私が実際にやった取引の話をします。

 これまでの記事よりも少しだけ難しい内容です。投資を始めて、「NISA」や「投資信託」、「個別株」という言葉が分かるようになった頃に読むとわかりやすいかもしれません。
 今は分からなくても大丈夫。
 この記事は、その日のために残しておくメモです。

目次

何があったのか

 私は「QYLD」というアメリカの金融商品を、旧NISAという制度で持っていました。
 1ドルが140円ぐらいのときに買ったものです。

 それを今回、1ドル160円くらいのタイミングで売りました。
 利益はおよそ40万円。
 NISAという制度のおかげで、この利益には税金がかかりません。
 本来なら約2割(約8万円)の税金がかかるところです。
 制度を知っているかどうかで、手元に残るお金がこれだけ変わります。

 売ったお金はドルのまま、約15,000ドル。
 日本円にすると約240万円です。

 私が少し悩んだのは、ここからでした。
 このお240万円をどう使うか。

落とし穴その1:「円に替えるだけで税金がかかる」ことがある

 ドルを円に替えるとき、「為替差益(かわせさえき)」というものに税金がかかることがあります。

 たとえば1ドル140円のときに持っていたドルを、160円のときに円に替えると、1ドルあたり20円の「もうけ」が出たことになります。
 これは「雑所得」という種類の所得になって、自分で確定申告しないといけません。
 雑所得については、証券会社で勝手に税金を引いてはくれないのです。

 私は、為替差益と税金の関係をよくわかっていませんでした。
 最初は、「もしかしたら、20円×15,000ドル=30万円分の税金の申告が必要?」とも考えました。

 しかし、実際には必要ありませんでした。

 為替差益の計算で基準になるのは、QYLDを買った日ではなく、売ってドルを受け取った日のレートです。
 140円前後から160円までの円安の分は、すでに売却益(40万円)の中に含まれていて、それはNISAで非課税。
 だから、売ったその日のうちに円に替えれば、為替差益はほぼゼロ。
 税金もほぼゼロです。

 逆に、ドルのまま何ヶ月も持っていて、その間にさらに円安が進むと、その分には税金がかかります。
 「売ったら、早めに替える」。
 これが今回の一つ目の学びです。

落とし穴その2:いいニュースに飛びつきそうになった

 円に替えた240万円。
 私は、買うかどうか迷っていた株がありました。

 それは、ロケット・ラボというアメリカの宇宙企業のかぶです。
 私が少し前から持っている株で、この手紙を書いている時点で、なんと買った値段の25倍以上になりました。
 これは、私の投資人生で一番の成功です。
 狙って買ったというよりは、ただ運が良かった。

 私は、ロケット・ラボの株価がもう少し上昇すると考えていたところ、ちょうどビッグニュースが出ました。  
 「NASDAQ100」という、アメリカを代表する100社が選ばれる株価指数に採用されることが決まったのです。

 「この指数に入れば、世界中のファンドが自動的にこの株を買う。株価は上がるはずだ。今のうちに買い増そう」

 私は本気でそう考えました。240万円ぶん、買い増すつもりでした。

 でも、立ち止まって調べてみることにしました。

  • ニュースが出たその日のうちに、株価はすでに14%上がっていた
  • 「指数に採用される」というニュースは、発表の瞬間にみんなが知る。だから値上がりも発表の瞬間にほぼ終わってしまう
  • 後から買う人は、「いいニュース」ではなく「いいニュースで上がった後の高い値段」を買うことになる

 冒頭のバフェットの言葉を思い出してください。
 せっかちに飛びついた人のお金は、忍耐強く待っていた人のところへ移っていくのです。

落とし穴その3:「買った株」が大きくなりすぎる

 もう一つ、数字を見て気づいたことがあります。

 私の投資の中で、ロケット・ラボ一社が占める割合は、全体の1割以上にふくらんでいました。
 たった一つの会社が、です。

 もしここに240万円を追加していたら、一つの会社が全体の2割以上を占めることになります。
 その会社に何かあれば、資産全体の2割に影響することになります。
 個別株や赤字ばかりの宇宙関連株を購入すること自体、リスクが高い選択です。
 ロケット・ラボの買い増しは、リスクが高いと判断しました。

 うまくいっている株ほど、もっと買いたくなる。
 これは人間の自然な気持ちです。
 でも、うまくいった結果としてすでに大きく育っているのだから、これ以上育てる必要はない。
 むしろ「育ちすぎていないか」を点検するタイミングだと思いました。

 それに、私が積み立てているS&P500の投資信託には、ロケット・ラボは入っていません。
 S&P500という指数は「継続的に黒字であること」などの厳しい条件があり、まだ赤字のロケット・ラボはその仲間入りができていないからです。
 今回採用が決まったのは、それより条件のゆるい「NASDAQ100」という別の指数です。

 これは、むしろ都合がいいことでした。
 S&P500の投信を買っても、ロケット・ラボへの集中はこれ以上増えない。
 自然と「分散」の方向に動くということだからです。

結局、どうしたか

 240万円は、こうしました。

 ニュースで上がった株を追いかけるのはやめました。
 また、新たに別の株を買い足すこともしませんでした。
 現在、日本もアメリカも相場としては、過去最高の水準にあります。
 これがバブルなのかは誰にもわかりません。
 ですが、割高だという印象があります。
 だから私は、現金で保有することにしました。

 以前の手紙で、現金で持っておくことは、物の値段が高くなった際にたくさんの現金が必要になる(インフレ)ため、リスクがあるという話をしたかと思います。
 しかし、同じ現金で持っておくという今回の判断は、行動は同じでも目的が違います。

 今後、暴落や株価が大きく下がるときは必ず来ます。
 それが、明日なのか、来年なのか、5年後なのか、誰にもわかりません。
 しかし、株価などが下落した際に、現金があれば価値のあるものを安く買うことができます。
 私は、そのときのために、現金を多めに保有することとしました。
 この選択が、正しいかは正直わかりません。
 しかし、自分で選択し判断し行動したものなので、結果はどうあれ納得できると思います。

まとめ

  1. NISAの利益は非課税。でもドルを円に替えるときの「為替差益」は別の話。売ったら早めに円転すれば、ここはほぼゼロにできる
  2. いいニュースは、発表された瞬間にもう値段に織り込まれている。後から飛びついた人が払うのは「ニュース代」込みの高い値段
  3. 一つの株が資産全体の中で大きくなりすぎていないか、ときどき確認する

 投資で一番難しいのは、計算でも知識でもなく、「買いたい!」という気持ちを一晩寝かせることなのかもしれません。

 あなた達がこの記事を読む頃、私の判断が正しかったかどうか、答えは出ていることでしょう。
 答え合わせ、一緒にしましょう。

父より


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